【書評】なぜこう書くのか?の謎に迫る『文章は「形」から読む』

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私達は日々、広告、契約書や注意書きなど、多種多様な文章に囲まれて暮らしています。しかし、それらの文書がなぜそのような「形」で書かれているのかを意識したことはおありでしょうか?

そういった疑問に答えてくれるのが、阿部公彦著『文章は「形」から読む』です。本書は、普段何気なく触れている文章の「形」の背後に隠された意図や仕組みを、著者の鋭い視点で考察しています。

ことばの「形」に宿る力

本書の中心テーマは、文章における「形」の持つ力です。「形」とは、特定の文章で用いられる独特の言い回しや構成のことを指しています。

たとえばお役所文書や契約書、料理本のレシピなど、特定の文章には独特な「形」があります。本書では、この「形」がどのような意図で使われているのかを著者独自の視点で深掘りしていきます。言葉の「形」から生まれる効果を理解することで、文章が読者に与える影響やその背後にある意図を読み取る力が養われるでしょう。

お役所文書や契約文書はなぜあんなに分かりにくいのか

お役所文書や契約書を前に、「なぜわざわざこんなに難解に書くんだ?」と思ったことはないでしょうか。本書では、学習指導要領や契約書を具体例に挙げ、その「形」が選ばれている理由を解説しています。

その中でも特に印象的だったのは、「証拠づくり」のために、あえて複雑でも網羅的な表現を採用したという考察です。網羅的に書かないとその部分が抜け道となってしまうたため、分かりやすさよりも抜け漏れのなさをあえて優先しているのです。本書を読むことで、こうした「形」の背後に込められた意図や必要性に気づかされ、納得感が得られるでしょう。

広告や料理本にもある「形」の秘密

本書では他にも、広告や料理本といった日常的な文章も取り上げ、それぞれの文章がどのような意図でその「形」をとっているのかを分析しています。広告文の簡潔な表現がどのような効果を生むのか、料理本のレシピがなぜあんなに厳密なのか、などの考察を通じて、文章が持つ「形」がどのような影響を与えているのかを深く理解することができます。

まとめ

『文章は「形」から読む』は、文章の「形」に焦点をあて、その背後にどのような意図や効果があるのかを掘り下げる一冊です。普段何気なく読んでいる文章に込められた意図や狙いを理解することで、書き手の意図をより正確に受け取ることができるようになります。また、自分で文章を書く際にも、読み手に与えたい効果に応じた「形」を意識できるようになるため、文章力の向上にもつながるでしょう。

ぜひ本書を手に取り、「形」から読み解く言葉の面白さを体験してみてください。

書籍情報

書籍名:『文章は「形」から読む ことばの魔術と出会うために』
著者:阿部 公彦
出版社:集英社
発売日:2024/03/15