あなたの好きなスポーツを思い浮かべてください。
あなたはは以下の内、どちらの意見が正しいと思いますか?
- A.ルールは絶対であり、守らないといけないものだ
- B.自分に都合が悪ければルールはどんどん変えていくべきだ
もしAを選んだなら、もしかするとあなたは知らず知らずの内に不利な立場に立たされているかもしれません。青木高夫著『増補改訂版 なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか ルールメーキング論入門』は、ルールを「守るもの」から「作るもの」へと捉え直す大切さを教えてくれる一冊です。
日本と欧米のルール観の違い
好きなスポーツやあなたのビジネスでルールが変更されるとき、あなたは何を感じるでしょうか?仕方ないと受け入れるでしょうか?それとも「誰かに都合良くルールを捻じ曲げられたのでは?」と陰謀を感じるでしょうか?
多くの日本人は「ルールは他の誰かが作るもの」であり、「作られたルールの下で最善の努力をすること」が美しいという考え方を持っています。そのため、ルールそのものが変えられてしまうことを「ずるい」と感じてしまいます。
一方、欧米人にとっては「ルールはあくまで”決めごと”であり、変更も”勝つための一手段”にすぎない」のです。つまり欧米人にとっては、ルール作りそのものが競争の一部であり、勝負はルールが確定する前から始まっているのです。
では、ルール作り自体を手段として使ってくる相手に対して我々はどう闘うのか?本書では全体を通して、私たちが取るべき様々な指針が著者の視点から解説されています。「ルールは他の誰かが作るもの」という思考からの転換は、チームや会社などの身近な場面においても役に立つ視点となるはずです。
ルール変更は勝ちすぎを防ぐ緩和措置
ルール変更は単なる「誰かを陥れるための手段」ではありません。本書では、ルール変更には「独走・独占の緩和措置」としての機能があると解説しています。
例えばスポーツでは、一部の選手やチームだけが常に勝利すると観客の興味を失い、競技自体の魅力が薄れてしまいます。同様にビジネスでも、市場の独占が進むと競争が停滞し、市場全体の発展を阻害します。ルール変更はこうした偏りを修正し、持続可能な競争環境を作るための重要な手段なのです。
ルールが永遠に変わらないということはあり得ません。本書はルール変更の意図を正しく読み取り、新たなチャンスとしてとらえる視点を持つことの大切さを教えてくれます。
まとめ
この本を読んで思い出すのは、SF「スタートレック」の「コバヤシマルテスト」です。このテストは、「絶望的な状況に置かれたときに最後まで的確な対応がとれるかどうか」を見極めるためのテストであり、本来は絶対にクリアできないテストです。しかし、ジェームズ・T・カークはシミュレーションのプログラムを書き換えてしまうことで、テストに合格してしまいます。
カークの取った方法はアカデミーから非難を受けるのですが、この関係はまさに本書における日本人と欧米人の関係のようです。与えられたルールに縛られるのではなく、ルールを含めてどう闘うかを考える。本書はきっとあなたの視野を広げるきっかけを与えてくれるはずです。
書籍情報
書籍名:『増補改訂版 なぜ欧米人は平気でルールを変えるのか ルールメーキング論入門』
著者:青木 高夫
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2013/3/16